4月のじないまち物語 西行法師と桜・夕去りの茶事

2014年04月11日 01:29

今年の西行法師と桜の茶事は、昨年とはまた少し変わったか角度でと、西行の僧としての修行と悟りの境地についても、少し踏み込んでみました。
お客様には、茶事の前に弘川寺の西行のお墓にお参りしてほしかったのですが、ご都合で弘川寺に行けなかった方、寒さに震えて、西行さんのお墓にたどりつけなかった方が多くて、ちょっと残念。
心うかれる桜のシーズンでも、西行法師のお墓のある小高い丘は、なぜか、深い静寂の世界。しんと鎮まりかえっています。あまり、人に知られることなく、心ある方が深い思いを持って訪れてくださること、西行法師が願っておられるようです。

じないまち夕去り 4月


4時お席入りのじないまち夕去りの茶事。
夕去りは初座が陽で、床には花を入れます。花が一番印象的にお客様の心に届く茶事です。
ほとけには 桜の花をたてまつれ 我が後の世を人とぶらわば
西行の願い通りに床に桜を入れました。見ごろは一日で変わるので、5日と6日は違う桜を入れました。5日は名前はわかりませんが白っぽい満開の桜を備前の手桶の花入れに、6日には可憐な小さな花をつけている桜を竹の手桶の花入れにたっぷりと。
桜を邪魔しないように、私の装いは地味なシルバーグレーの一つ紋の色無地を選びました。
初炭手前の香合は、雲のような文様にも見える萩焼き。「空」の文字が描かれています。この空は茶事が終わるころには、お客様もなるほどと納得していただけたかと思います。
懐石では、山形県の出羽桜酒造の吟醸酒「桜花」を、ご用意しました。美味しくて、千鳥の杯では、私もたくさんいただいてしまいました。
主菓子は、アシスタントのRちゃんの作。私が作るより上手に作ってくれました。お茶のお菓子は、縁高に一つ入れたときに、一番映えます。春らしい蝶々です。

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後座の床には、円相をかけました。よくある軸ですが、今回の茶事が一番ふさわしかったと思います。
ゆらめく蝋燭の灯りのもと、ぽつぽつと西行と桜の世界を物語りさせていただきました。
西行は僧名を円位と申されます。桜と月をこよなく愛された西行さんに手向ける満月にも見えます。
高野山で30年の修行を積まれた西行法師は、月輪観を究められ、自身が満月のように円満で清浄であるように観ずる禅観を体得されています。
最晩年には、歌を詠むことをやめ、桜も月も歌にしなくても、そのままで歌なのだと、円が静かに閉じてゆくような境地に達したそうです。

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西行さんは、歌を一首詠むごとに仏像を一体刻むように、難解な仏教の経典を一巻読むように、精魂こめて詠ったと語っています。西行にとっては歌が悟りの世界に入るための修行の道だったのでしょうか。
薄茶の煙草盆の火入れは膳所焼。琵琶湖畔を行く旅人と、琵琶湖に浮かぶ舟の図をご用意しました。
西行がこの世を去る半年ほどまえに、比叡山に一泊の旅をして、朝の琵琶湖を見て詠んだ歌
にほてるやなぎたる朝に見渡せば こぎゆくあとの波だにもなし
朝凪の静寂な琵琶湖を漕ぎ行く舟のあとには波さえもない。私の心はこのように空寂です、と。このとき「空」を悟られたと伝えられています。
そして。1190年寺内町から車で10分ほどの山寺「弘川寺」で終焉を迎えられます。
ねがわくば 花の下にて春死なむ そのきさらぎの望月のころ
その二年後に源頼朝が鎌倉幕府をつくっています。平安時代の終わりに亡くなった西行法師、ずいぶん昔の人なのに、身近に感じるのは、日本人の美意識や感性がちゃんとDNAに受け継がれているからかもしれません。
春風の花を散らすと見る夢は さめても胸のさわぐなりけり

西行と桜

今年の桜は、雨で散っています。あと、少し、桜の季節を楽しみたいと思います。
薄茶の干菓子は、私が作りました。自然な風情が出るように、桜の花びらは少し上からパラリと落としました。自然と私のコラボです。(*^_^*)
古い歴史のじないまちで、私の物語の茶事も少しづつ形になってゆきます。体力がいつまで続くかが問題ですが、お茶を通じて、私も悟りの境地に近づけたらと願っています。


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