2011年12月汎庵茶事講座「夜咄の茶事」レポ

2012年01月18日 12:47

じないまちでの活性化のお手伝いなど、用事が増えて、レポートが遅くなりました。

12月9日10日11日、万博・日本庭園の茶室汎庵にて、蝋燭の灯りで楽しむ夜咄の茶事の勉強会を開催しました。
日本庭園は、急ぎ足で冬支度。落ち葉のじゅうたん、大量のどんぐりの実を踏みしめながら、汎庵へ荷物運び。
お茶道具、懐石道具、懐石やお茶の材料や消耗品などなど。茶事をするには、それはそれは多くのものが必要です。夜咄ですから、灯りの数々の道具や暖を取っていただくための火鉢や手あぶりなども。
茶事は「夜咄で上がりて候」と言われるように、なかなかたいへんなのであります。でも、たいへんな分だけ、お客様には感動がON、亭主や裏方にとっては得がたい修行がONできるもの。がんばらなくっちゃ、です。特に、半東役の方は、いつもより一杯することがあって、しかも暗い中で。皆さん、しっかりやり遂げてくださいました。お疲れ様でした。

日本庭園は開園が午後5時までですので、夜の茶事は無理・・・ではないのです。昨年も、実は昼に夜を作ってしまいました。
茶室だけ、電気を消して、雨戸を閉めて暗くしても、露地には太陽が・・・では、気分が出ませんので、茶室の隣の立例席に、にわか露地と腰掛待合を作りました。これで露地も真っ暗。

12月汎庵茶事講座

夜咄の茶事の環境が整いました。雪がしんしんと降りしきる寒い夜をイメージして茶事が始まります。今回の隠れキーワードは「小狐こんこん」
数年前の冬に京都の相国寺の宗旦稲荷にお参りした帰りに、ばったり出会った方もお客さんにいらしてくださいました。
ここ、万博の地にも狐がいたんですよと終始楽しそうにお話くださった男性のお客さま参加の方は、ひょっとして現代まで生き延びた宗旦狐さんが化けたのかなと思わせるような、軽妙洒脱な素敵な方でした。
狐の灯りに導かれて、まるで夢のような3日間の茶事ができました。
年末で何かと忙しくてご参加が叶わなかった方も、茶事講座の一端を、レポートでお楽しみください。

水屋勉強コースは、午前10時から、いつものように懐石料理とお菓子の実習があります。見ているだけの料理教室では、解ったつもりでも実際にやろうと思うと出来ないことも多く、私は見ているだけの料理教室は、実際に作ろうと思わないことが多いので(私もフレンチや中華の料理教室は行くことがあります。何せ、食いしん坊なので。笑。)茶事講座では、なるべく、いろんなことをしてもらっています。失敗も一杯してもらっています。失敗するとしっかり覚えるし、皆の勉強にもなりますので。
11時になると半東さん役は、半東モードになってもらい、時間と闘いながらの作業が始まります。水屋(台所方)は、懐石の食器の準備や料理の仕上げをしてゆきます。

お客さんコースは午前11時40分に待合に集合。
茶事のお客に呼ばれたときの対処の方法、席入りまでの動きを解説させていただきます。今回からは、本番の茶事のときに困らないように、お包や会費の袋の用意や渡し方なども体験していただきました。

12月汎庵茶事講座


汲みだしは、本日は甘酒です。寒い中いらしていただき、冷えたからだを温めてもらおうと思う亭主の気持ち、そして前茶のお菓子代わりになるように、夜咄では生姜湯や柚子茶などもお出しすることがあります。
にわか仕立ての露地に入ると、揺らめく蝋燭、足元には火鉢、円座と莨盆のほかに手あぶりも用意されています。

12月汎庵茶事講座

亭主の迎えつけで、手蜀の交換。ここは、グッと感動する場面です。

12月汎庵茶事講座

蹲に湯桶が用意されていますので、お湯で手と口を清めます。

席入りすると、床には手蜀が置かれていますので、蝋燭の揺らめく灯りで掛け物を拝見します。
本日の掛け物は、利休も参禅したという堺の南宗寺の老師の筆にて「紅炉一点雪」。
蝋燭の灯りのほの暗い茶室の中では、赤くいこった炉の炭がひときわ美しく目に映ることでしょう。その赤い火の中に一片の雪が落ち、その瞬間に消えてなくなります。その鮮烈なイメージに皆さんは何をを感じ、何を思われるでしょか。この謎解きは、2月の峯風庵茶道塾inCALPE DIEM 草間彌生展スペシャルでお話させていただきます。

主客挨拶を交わし、前茶となります。裏千家では初入りの釜は濡れ釜にしますが、夜咄は煮えのついた釜をかけます。茶室の中が少しでも温まるようにとの配慮もありますし、まずは一服お茶を召し上がっていただき、冷えたからだを温めてもらおうと思う亭主の気持ちです。
短檠の灯りだけで、水屋道具でサラサラと進めます。

12月汎庵茶事講座


続いて、初炭手前。下火にうっすらと尉がかかっている、その風情が深く心を打ちます。尉は情でもあります。おもてなしいただくご亭主のお気持ちが、炭の姿に表れています。

12月汎庵茶事講座

羽箒は、縞ふくろう。
手蜀の明かりで香合の拝見。楽斎作の信楽の可愛いたぬきです。
夜咄では、夜行性の動物たちが大活躍です。

12月汎庵茶事講座


懐石には膳蜀が供されます。蝋燭の火が危なくないように、四畳半以下の小間では、膳も膳蜀も、畳の縁内に取り込みます。汎庵は広間ですが、夜咄は小間で3名くらいのお客様で開催するのがベターですので、小間のつもりで取り込む勉強をしていただきました。

12月汎庵茶事講座

食事中、蝋燭の芯を切るのもお客の役目。皆さん楽しそうに火遊びなさっておりました。笑。こんな体験はめったにできません。

懐石の向付は今回新作の天然の甘海老と長芋、アボガドの和え物。加減醤油に少し油を混ぜました。寒いときには油分を取ると体が温まります。何か蒸し物のような暖かい向付けが夜咄ではご馳走ですが、ご飯と汁、向付、三品を熱々でお出しするのは、結構難しい。懐石のメニューは、当日の水屋のスタッフの力量も考えて作らないと、無理を重ねてはかえっておもてなしが台無しになったりすることも。茶事は何事も臨機応変です。

12月汎庵茶事講座

汁は、一夜凍豆腐。寒い日には水に浸けておいた豆腐が一夜で凍ります。今ではそれほど寒い日は少ないので、冷凍庫に一晩入れ、解凍して薄味で煮ると、出来上がり。おもしろい食感です。名前を聞くだけで、ああ、寒い冬って言う感じでしょ。
煮物椀は、雪のように見える蕪蒸し。

12月汎庵茶事講座

焼物は、寒ブリの鍋照り焼き。氷見の天然のよい鰤が手に入りました。強い肴は大根と豚のべっこう煮。鍋仕立てでお出しします。懐石では背の青い魚や豚などはあまり使いませんが、夜咄だからこそのメニューです。

12月汎庵茶事講座


八寸は、銀杏の松葉刺しと鴨です。

12月汎庵茶事講座

お酒は、新潟の地酒「雪の茅舎」。少し熱めに燗をつけて。
主菓子は、これも暖かい蒸し饅頭にしたいところですが、今回は雪の振る寒い夜のイメージなので、練りきりの雪兎にしました。氷餅を振りかけています。兎の年も、もう少しで終わりです。

12月汎庵茶事講座


中立で露地に出ていただくと、わあ~~と、歓声が起こります。
半東さんのセンスで並べていただいた20匹の小狐のキャンドルが、揺らめいています。
キャンドルアーティスト、小泉淳司さんのキャンドルです。中の一匹は宗旦狐です。
写真をお見せしたいところですが、これはご参加いただいた方だけのお楽しみにしておきましょう。私の夜咄のおもてなしの趣向です。

鐘鉦で後座の準備がととのったことをお知らせします。
床には、花の変わりに、石菖の鉢をおきます。蝋燭の油煙を取ってくれるという植物です。
花を入れると陰が心を惑わすので、夜咄では花を入れないのです。

蝋燭の明かりの中ではご亭主の姿や所作がことのほか美しく感じられます。夢のような濃茶が練りあがるまでの時間。夜咄ならではの醍醐味です。

12月汎庵茶事講座

茶入は古唐津の大海、茶碗は、寛治作のうっすらと雪をかぶったような赤楽です。茶杓は、太玄和尚作の「庵の友」。今宵であった方はみんな、生涯を通じての茶友になれますように。

続き薄で、薄茶を。

12月汎庵茶事講座

棗は、私がデザインして池ノ浦大紀先生に作っていただいた、雪華蒔絵大棗。夜咄で映える大きな雪の結晶が表に二つ、中に三つ。茶碗は、桐山作の「木枯らし」を主に茶碗にしました。
干菓子は、実習で作った雪輪の落雁と笹の雲平。雪笹に見えるように盛り付けました。

12月汎庵茶事講座


講話は、今回は軽めのお話「相国寺と宗旦狐」。夜咄ですから、何か皆さんでお話をと言う趣向です。宗旦は利休のお孫さん。仕官せずに市井の茶人として慎ましく生きた方とのこと。美しい点前とお人柄に人望も厚かったそうで、宗旦のような茶人になりたいと思った古狐が、京都の相国寺の茶会で宗旦に化けて点前をした狐がいたそうで、今も相国寺の中に、この狐を祭った祠があります。もっと長い話ですが、ここはかなりはしょってしまいますね。祠に詳しい話が紹介されていますので、いちど、是非、足をお運びください。相国寺の中にある承天閣美術館では、長谷川等伯、俵屋宗達などの屏風絵店も開催されています。

止め炭をして、釜に煮えがついたら、名残惜しいですが、退出のとき。
最後の挨拶では、ぜひとも、お客様はご自身の言葉で、一言でも感じたことを亭主に伝えてくださいますように。亭主のおもてなしは、客が感じたことが総てです。大寄せの茶会のように亭主から説明することはありませんので、おもてなしの世界を心で感じ取れるお客様がいないと茶事は成り立ちません。茶事の当日は皆さん、あまりお話をされないのが残念なのですが、後日にメールやお手紙などをいただくと、いろんなことを感じ取ってくださっていて、ああ、しんどいけどやってよかったなあと、しみじみ思ったりしています。

次回も、稽古のための稽古茶事ではなく、主、客、裏方、三者三様に心を育てる茶事になるよう、創造的な茶事の世界をご用意したいと思います。
次回の2月は10日11日12日に開催します。幻の茶飯釜の茶事ですので、お楽しみに。






関連記事


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://wa202020.blog64.fc2.com/tb.php/51-ca49a541
    この記事へのトラックバック


    最新記事