じないまち峯風庵「除夜釜の茶事」レポ

2012年01月18日 12:49

谷町の峯風庵を閉じてから、三年ぶりの除夜釜の茶事です。
除夜釜は大晦日の夜のお茶から、年越しをして新年の茶事をいたします。
おもてなしの世界を一度に二つ作りますから、しっかり気合を入れないと出来ない茶事です。
お茶は実践してこそ、いろんなことがわかってくるもの。たいへんな茶事だからこその深い世界を主客ともに感じることが出来ます。早々にお正客様からいただきました筆文字巻紙の長い礼状は、とてもうれしくて、私の宝物箱に納まりました。感謝。

今はもう、除夜釜の茶事をされる方がほとんどなくなってしまったので、遠くの方々からもお問い合わせ・お申込みをたくさんいただきました。一年にたった一日、それも、いろんな条件やタイミングが整ってはじめてできる茶事です。来年の申込みは出来ませんかとのお申し出もいただきましたが、お約束は出来かねます。来年は出来るかどうか、あと残された人生で何回できることか。除夜釜はいつもこれが最後かもと言う覚悟で、釜かけさせていただいています。
茶事のことですので、たくさんのお客様をお招きすることは叶いません。私が出来る精一杯の人数が6名様。6名様のために、一ヶ月あまりかけてご用意をさせていただきました。お客様とご一緒に、よい一期一会になるように願って・・・。

31日の午後10時お席入り、で、終わったのが元日の7時。

蝋燭の灯りで行く年のお茶。待ち愛の掛け物は、卯年の色紙。蝋燭の明かりが揺らめく露地で蹲を使っていただいてお席入り。じないまちの箱火鉢にはシュンシュンを煮えのついた釜がお迎えしています。床には「無事是貴人」の語。石菖の鉢。和楽作の鐘の香合を飾りました。

2011年除夜釜の茶事

手作りの熱々の柚子蒸し饅頭は、セイロで蒸してそのままお出しします。餡が暑くなっていますので、気をつけてお召し上がりくださいと、ご注意を。本当に熱々なんです。饅頭の皮に柚子をたっぷり練りこみましたので、いい香りが一杯に立ち込めます。

2011年除夜釜の茶事

干菓子は市田柿にすり蜜の雪をふんわり盛りました。

2011年除夜釜の茶事

蝋燭の揺らめく、しっとり、ホッコリした茶室でゆっくりとお茶を召し上がっていただいた後は、年越し蕎麦です。
蕎麦椀を冷めないようにと小風呂敷で包んでお出しします。今年は,にしん蕎麦にしました。

2011年除夜釜の茶事

そうこうしているうちにじないまちに、除夜の鐘が響いてきました。

除夜釜では、峯風庵のある富田林じないまちができる中心となったご近所の由緒ある興正寺さんで除夜の鐘をつかせてもらうことに。地元の方が数名いらっしゃるだけで、なんともひなびた風情です。和尚様や奥様が笑顔で迎えてくださって、いくつでも鐘ついてくださいね、と、おっしゃっていただきました。

2011年除夜釜の茶事


本堂にもお参りさせていただいて、お客様は、12時16分発の近鉄電車に乗っていただき、橿原神宮に初詣に。橿原神宮は清々しい立派な神社でこのあたりの初詣のメッカです。
お客様が初詣に出かけている間に、すっかり新年の室礼に変えてゆきます。
今回は帰ってこられるまでに3時間はかかるだろうと、ちょっとゆっくりしていて、時間が足りなくなるといったドタバタも。汗。

床には、念願の結び柳、紅白の椿、橙とゆずり葉を飾った餅飾り。
掛け物は、大徳寺弧逢庵の卓厳和尚の筆「松樹千年翠」です。松の翠はいつまでも美しい。その変わらぬことを寿ぎ、おめでたい茶席に掛けられることの多い禅語です。この語は「不入時人意」と対句になっています。時の人の意に入らず。移ろいやすい世の中で、移ろうもののみに目を奪われていては常住普遍の真理を見失う。美しい松の翠も、見る人の心がなければ理解することは出来ないもの。 茶事もお一人お一人のお心の深さ、人生の積み重ねがあって、はじめて生きてくるものです。

2011年除夜釜の茶事


来る年の初入りは、明けましておめでとうございますの挨拶で。
灰をかぶせて埋めておいた炭を半田に上げて、そこから種火をもらって、初炭手前。古きよき伝統をつないでゆくという茶人の思いが込められています。そして、釜の水は若水に取替え、濡れ釜をかけます。古きよきものに、新しい息吹を注ぎ込むことによって、歴史や文化が作り出されてゆきます。
普段は何気なく、過ごしてしまいがちですが、大切なことに気づかされるのがお茶です。
今回はベテランの茶人さんが、しばらくお茶から離れるので最後にと水屋をしてくださいました。そして、若いお嬢さんお二人もお正月返上でお手伝いくださいました。私が師匠や茶友に伝えてもらったお茶の文化を、若いお二人に伝えるチャンスになったことも、今回とてもうれしいことでした。
茶事の当日までの準備で疲れも水屋では顔に出てしまいます。後日水屋の方からメールをいただきましたが「満身創痍で、全身全霊でおもてなしされる姿に、そして、伝統をつないでゆくという話に泪がこぼれそうになりました。」という言葉をいただき、ボロボロになりながらもやり遂げた茶事を、また反芻して、感謝と感動が改めて蘇ってきました。

おめでたい赤い時代根来のお膳に羽子板を置き、お正月のお料理の数々を盛り付けて、新年のお食事。

除夜釜


お酒は東北の地酒「七福神」です。煮物椀は蟹真蒸。八寸は、伊勢海老と黒豆の松葉刺し。主菓子は手作りの花びら餅です。餅粉を使ってしっかり練って作ります。市販のものにしようかとも思うのですが、手前味噌ですが私の作るもののほうが断然美味しい。是が作れなくなったら、除夜釜の茶事も終わりかも。

嶋台の茶碗で練った濃茶、めでたい注連縄のお茶椀や松竹梅のお茶椀で薄茶を。干菓子は、京都の手作りの開運干支飴と、手作りの松の落雁でした。

御付き合いくださるお客様がいて、水屋をお手伝いいただける方がいて、皆さまのおかげで、幸せなお茶の年越しができました。
水屋の方々と最後にお茶をいただいたら、朝が白々あけてきてきました。
なんとも美味しいお茶でした。

稽古茶事ではありませんので、写真をとるのを控えましたので、少しだけしか写真はありません。
茶事で持ち帰れるのは、主菓子についてきた黒文字と思い出だけ。本番の茶事では写真を撮るのはなるべく控えたほうがいいですね。

最後の写真は、元旦の峯風庵の玄関の風景です。

2011年除夜釜の茶事




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